【長期連載コラム】
『モーニング娘』。を語る
【3】
 後藤真希は、モーニング娘。にあって、はじめてその魅力が引き立つのであって、ソロで売り出したところで、松浦亜弥のような力はない。これは辻加護のユニットもしかり、安倍や中澤のソロ活動もしかり、である。

 ソロで売れなかった藤本がモーニング娘。に加入したことで人気が回復、『歩いてる』では、久しぶりとなるオリコンチャート1位を獲得したことも記憶に新しい。これは、そもそもアップフロントが『ソロ』を売ることに慣れていないことの証明でもある。

 現在アップフロントに所属するソロで知名度の高いのは、『五木ひろし』『堀内孝雄』『森高千里』などであるが、はっきり言えば、落ち目になってきたタレントを、仲のよかったアップフロント社長が拾い上げた、という印象が強い。

 松浦亜弥が唯一の成功例かも知れないが、これも当時勢いのあったモーニング娘。の二次的な産物といった印象も受ける。

 やはり、『個』を生かすよりも、『集団の中の個』を生かすことがうまい事務所が、これに逆らったことがそもそものモーニング娘。の崩壊の原因となったのだ。

 歴史にもしもはダブーだとされるが、もし後藤、安倍、辻加護、藤本が、問題行動や結婚するギリギリまでモーニング娘。に残っていたら、現在の展開は大きく変わっていたであろう。

 そして、一回目の賭けに出たつんく♂は、7期オーディションで、重大なミスを犯してしまう。

 それは『エース』選定のミスである。

 何度かの再選考、該当者なしというオーディションの中で、最終的に選ばれたのは、後藤と同じく『たった一人』の合格者となったのが、現在はモーニング娘。を卒業し、モデルとして活動をしている、『久住小春』であった。

 つんく♂は人目をはばからず彼女を『エース』として推し、『ゴマキ並みの逸材』などとコメントし続けたが、確かに細身でスレンダーなスタイル、特長のある声、安定した音程やリズム感など、それなりの資質はあったが、それが一度下降線をたどったモーニング娘。を再び浮上させるだけのものであったか、というと疑問だ。

 容姿も、確かに可愛いことは否定しないが、後藤のような『セクシーさ』や『影』は彼女には存在しなかった。アイドルというのはそういったダークな部分があって成功するという例が多いのであるが、久住小春はその部分がなかったのである。

 さらにつんく♂と事務所はこの点を埋めるために、久住を『きらりんレボリューション』の主人公の月島きらりとして売り出し、声優とともにこのアニメのテーマ曲を歌わせて、彼女のキャリアアップに着手したが、これも単発で終わってしまった。

 つんく♂は、自身の著書の中で、『俺は女性の隠れた魅力を見つける力がある』と自分を評価している。『中一のとき、誰もが見向きもしなかった女子生徒を俺が絶対アイツはキレイになると断言したら、本当に中三になったら美人になっていた』と実際の思い出も振り返る。

 確かにつんく♂の最大の武器は、その『隠れた魅力』を見抜いて、それを引き出す力であるから、プロデューサーとしての適性はおそらく日本でも一、二を争うものだろう。

 もしも、これももしもであるが、つんく♂が現在のAKBのプロデューサーになれば、今以上の話題性と人気を勝ち得るかも知れない。

 しかし、問題は、すでに『完成形』に近い年齢の女性をアイドルに適性をもつように訓練、整形(もちろん本当の整形ではない)してアイドルに仕立て上げるAKBの方法論と、まだ発達途中の小学生、中学生の少女を育てていくつんく♂の手法の違いである。

【つづく】
22/12/21
なにをしてるんだ俺……。
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