【長期連載コラム】
『モーニング娘』。を語る
【2】
 黄金期を迎えたあとに打った次の一手がまずかった。
なにより大きかったのは『後藤卒業』である。後藤をソロにして、次のエースを藤本、石川、新垣、高橋あたりに世代交代、と考えていたつんく♂は、これを推し進める。
さらに、安倍を卒業させることで、その地位をはっきりとアピールしようとしたのであるが、これがまずかった。
 やはり、後藤、安倍に代わるだけの人気と器が後のメンバーにはなかったのである。これは、後藤および後藤の弟の素行に問題を感じていた事務所側の意向だという説もあるが、それでもこの問題はモーニング娘。の没落に大きな影響をもたらす。

 後藤自体がつんく♂の提供する楽曲に抵抗を示し、アーティスト路線に強い志向性を示しだしたこともその要因となったことも確か。そして、安倍はエースとしての人気と能力だけでなく、『口うるさいうっとおしい先輩』としてのポジションも実は重要で、これがいなくなったメンバーは次第に求心力を失っていった。

 これに代わった石川が、この安倍の『説教』ポジションを継いでいくのだが、これもまた彼女には荷が重かったのである。

 そして、トドメになったのは、モーニング娘。がモーニング娘。たる存在感を示す、『辻、加護』の卒業である。ここにもまた、私生活においてすでに問題行動の目立った加護をきりたかった事務所側の意向もあったとのことであるが、このふたりのツートップを失ったことは、モーニング娘。にトドメとなるダメージを与えた。

 加護は、そもそも『辻加護』としてセットで売られていたが、辻とは正反対の属性をもつ女性である。二人とも『陽気、純粋』というイメージで売られていたが、辻は比較的豊かな幸せな家庭で育った都会っこである。彼女が明るさを持っていて、それが周りを照らし出す要素をもっていたことは自然な流れ。しかし、加護のほうは決して幸せな家庭環境にはなく、経済的にも困窮している生活を送ってきていたのだ。その属性はむしろ『暗』や『闇』に属するもので、彼女のもつどこか底知れぬ影と垣間見せるセクシーな部分はそこから派生したものであった。

 それだけに、辻加護で構成される『パワー』はモーニング娘。のエンジン部分とも言えるもの。この明暗がうまくまざりあった味は、つんく♂も予想以上の効果が発生したことに驚いたことだろう。

 これを切り出して、『UUダブルユー』で売り出そうとしたことは、確かに理にかなってはいるが、それでも『ソロ』として露出するには力不足だったのだ。

 モーニング娘。では度々こういった『勘違い』が決定的な戦略ミスとして何度も起こる。

【つづく】
22/12/21
なにをしてるんだ俺……。
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