【連載コラム】中国問題

連載コラム『日本国滅びの美学』4

自分が何と戦っているか見えない中国国民

話は少し大きくなって、世界全体における日本と中国、という視点に戻る。
今年に入って日本と中国、日本と韓国、そして、数年前から続いている北朝鮮との関係が次々と争いの主軸としてあがっているのだが、本来、この日本、韓国、中国という『アジア』の基軸ともなるべき三国は、むしろ対世界、という考え方の中で『アジア連合』を形成する主役となるのが本来の形だと思う。

古く日露戦争の時代に、日本を『アジアの盟主』として、天皇の名の下に一致したアジア共同体を作ろうという風潮がアジア全体として生まれたのは、まさにこれに合致するものであって、(私個人の意見としては)アジアの盟主が日本でなくとも、韓国でも中国でも構わないのだが、そこで一致して世界の軍事・経済に当たる、という方向性が本来の理想的なアジアの戦略なんだと思う。

やれ尖閣だ、やれ竹島だと争っている労力をもっと外に向けないと、いつか竜虎相争うの形になって疲弊したアジアが再び欧米の餌食になる日も遠くないと思う。

もちろん、アメリカのように一国でもある程度の自給自足と資源の確保が可能であるならば、それが最もよいことは当たり前なのであるが、日本と韓国は残念ながら物資の面で単独の自給自足というのは今日大変困難な局面にある。
中国は国土・人・物資の面では豊かながら、その広大な領土と多種多彩な民族や宗教を一元化するには非常に困難な局面にある。

残念ながら、やはりそれぞれの国がそれぞれの国の長所短所を埋めあう形で形成する共同体の形成が、世界に対してアジアが発言権を持ち、発展していくための必須条件なのだと思う。

さらに中国国内の問題について言えば、中国国内における既得利権をもった共産党員や軍人、一部の企業家などが、その権力を簡単に破棄することはないと思われる。

彼らが生き残り、繁殖するのに最も適した培養地は中国の共産主義社会なのだから、人類の過去歴史上まれにみる巧みな隠れ蓑がはがれるには、まだまだ数十年の、いやヘタをすれば数百年が必要となるだろう。

それだけに『アジア全体』で発展していこうとする視点での求心力が必要で、アジアの資源を一元化し、アジア各国の民族の持った特性や能力をうまく組み合わせて世界に向かいあっていかないと、いつまでも片輪で走行する車のような状態が続く。

むしろ、日本の島国主義や、韓国の自己中心的な主義思想、中国の共産体制、北朝鮮のファシズムなどは、その目を『対世界』に向けることで転化させていくべき時代に来ているのだ。

そんなときに、今回のデモの問題だ。いま、このときに、誰と、何と戦っているのだ、と思う。漠然と日本が気に入らなくて、漠然とデモをしている。

具体的に日本にどうなってほしいんだ。中国の人民解放軍が進駐して、日本が中国の属国になれば満足なのか。それとも日本国民が一人残らず核爆弾の餌食になって、この世界から消滅すればいいのか。中国国民は、中国共産党によって、完全に理性を失っている状態である。

日本にやってきた留学生や労働者はことごとく目が覚めて帰っていくのに(旅行者は除く)、それでも中国国民全体の比率からして1%にも満たないわけで、その巨大な母体はいまだ理性を失って迷走している状態だ。

中国の航空、新幹線、各地の学校や役所、さらに道路に線路にという生活インフラは、誰が金を出して、誰が作ったものか。そして、日本が滅びたらそれはどうなっていくのか。また明や清や中華民国の時代のように、過去の伝統を鼻にかけて柵封主義をかかげているうちに世界の文明や文化、軍事や科学技術で最も劣った国に成り下がることは目に見えて明らかだ。同じ過ちをまた繰り返すのか。

これはほとんど八つ当たりにも似た怒りであるのは理解している。

ネット情報が数万人態勢の情報監視組織・システム【5】によって管理遮断され、言論や報道は完全にディスインフォメーションされて流される。中国の歴史指導には、どうどうと『日本人や日本ファシズムに憎しみを持たせるように教育せよ』と書かれており、それに基づいて構成された教科書や捏造史料で、何も知らない真っ白な子供たちはまた新しい反日分子として育てられていく。
そんな中で、正常な価値判断や状況判断を求めるのは、もしかしたら酷なことなのかも知れない。しかし。

もし日本がある日、突如消えてなくなったら、中国共産党は一夜の元に消滅するのは、間違いなく私の予言するところである。もはや中国共産党が自身の政治的ミスや貧富の差への国民の不満を無理やり向けさせる場所は、アメリカくらいしかなくなる。しかし、当のアメリカは中国が何を仕掛けてこようと経済・資源において完全に独立していて、日本のように中国に過度の依存がない。資本規模もバカな日本企業と違って、しっかりとリスクコントロールしていて、安いからという理由だけで中国にゴネられるとそれが国家戦略や外交にまで影響してくるような資本投下は絶対にしてこない。

今や中国は自己で資源を持っていて、ある程度の軍事力または核を持っている国には何の影響力も持つことの出来ない国なのである。
現にレアアースの件で、『資源外交』に生理的歴史的嫌悪感を持つヨーロッパが、劉暁波氏【6】 をノーベル平和賞に、と推した一件でも、中国は何もできない。なんだかごにょごにょと声明を出していたが、中国の資源に依存してない、かつ中国の軍事力に屈しない国の集合体であるヨーロッパが、こんなものは無視してさしつかえない、と突っぱねるのは当然で、日本の腰砕け外交とは雲泥の差だと思う。いわんやアメリカは、という話である。

話はそれたが、そんな理由で日本がなくなれば中国共産党は国民の批判を浴びて一夜にして崩壊する。日本に憎悪の限りを尽くす中国共産党が、その日本なくして存在しえないのは皮肉な論理である。
日本は適度に痛めつけつつ生かし、それをいたぶることで国内の不平不満を解消させる、というのが中国共産党の生き残りをかけた唯一の手段であって、中国国民はいまこれに乗せられて内政のマズさから無理やり目をそらされているに過ぎないのである。

しかし、いくら情報統制やディスインフォメーションでコントロールとはいえ、その反日の先に、そのスローガンとなっている日本壊滅や日本国民全滅がなったとして、そこにあるのは地獄であることを、中国国民は理解できないのだろうか。
そこに私は少なからずもどかしさを感じるのである。日本が憎いのはこの際仕方ない。そう洗脳されているのだから。でも、消滅したらどうなるか。その視点がいまの中国国民には欠けているのである。形はどうであれ、必要悪でも構わない。日本が存在することの意義を中国国民はもう一度考えてほしいと思う。


【5】金盾政策 1993年に中国が計画した『金字工程』による国策の一環。具体的にはインターネットにおける中国国内での情報閲覧の遮断や削除、改ざんなどによる情報統制を行うというもの。1998年に計画され、2001年にスタートした。これによって天安門やダライラマ、民主化などの用語は全く遮断されることとなり、その情報支配は巨大な人とコンピューターシステムによって今も続いている。

【6】劉暁波(1955年−存命中) 今年(2010年)ノーベル平和賞を受賞。中国の民主化運動家。現在も中国共産党によって投獄されている。天安門事件にも参加し、学生たちを救った四君子の一人として名を馳せた。2008年に起草した『08憲章』によって、2009年に『国家政権転覆煽動罪』で逮捕。懲役八年の実刑判決を受けて服役中。ノーベル賞受賞では、『天安門の犠牲者にこの賞を捧げたい』とコメントした。

コラムトップへバック
Dr.K愛のサイトへバック